こんにちは。沖縄県在住の映画&音楽ライター石川尚彦です。ryukyuでは、沖縄県を題材にした、本や映画を紹介しています。
4月も後半になると、日本の桜もそろそろ終盤を迎えますね。沖縄では2月頃に咲いてしまう桜ですが、まだ日本で桜が咲いている間にぜひ今回紹介する絵本を読んでみてください。
さくらの花のように
今回紹介する絵本は山里米子さんの『さくらの花のように』です。
山里米子さんは沖縄児童英語研究会の理事長さん。米軍基地内で教鞭を執っていた時期があり、その時期に幼少期についていくつか尋ねられ、過ごし方や、勉強の仕方などを尋ねられたんだとか。その経験が絵本を描くするきっかけになったそうです。
英語表記と日本語表記が並記され、英語の勉強にも役立つ作りになっており、絵柄も“絵本”というよりは、マンガのような雰囲気。そのため、マンガを読む感覚で読むことができる作りになっています。
『さくらの花のように』は、沖縄の名護の羽地地域の伝統的生活習慣「人生儀礼」についてなど、戦前の生活習慣が描かれています。(戦前は羽地村だったのですが、現在は羽地地域という名称になっていますよ。)
「人生儀礼」とは、古くから伝わる妊婦彼岸から死後の供養まで人の一生の儀礼のこと。タイトルで使われている「さくら」は物語の重要な部分で登場します。ぜひ読んでのお楽しみに♩
『さくらの花のように』の舞台は羽地地域。そのため、地域性がとても強調されて描かれています。著者の山里さんが生まれ育った地域に根ざした人との関係性と、ひとりの少女の成長の物語です。
名護市博物館にも「人生儀礼」をテーマにしたパネルの展示があります、絵本『さくらの花のように』を読んで「人生儀礼」に興味を持たれたら、ぜひパネル展示を鑑賞してみてください。絵本『さくらの花のように』の理解が深まり、沖縄の歴史を深く知るきっかけになるかもしれません。
また、伊差川公民館の周辺には古い羽地地域の風景がまだ残っているようです。景観が変わりゆく沖縄で、沖縄の人ですら忘れかけている名護の羽地地域の話を読むと、日頃から当然のように受け止めていたことが、時代とともに無くなり、誰も覚えていないという沖縄の現実を実感するでしょう。
絵本ではありますが、読み手の記憶に訴えかける1冊です。
さくらの花のように(株式会社コミックチャンプル―)
著/山里米子
絵/保里安則
英訳/ジェームス・ロス / ケネス・ロス